【氷上で磨いた小技】×【8年越しの初優勝】=【遅咲きのV3】
1、基本情報
父と通った戸田から、8年越しの初優勝へ――平川香織という遅咲き
- 登録番号 5045
- 氏名(読み) 平川 香織(ひらかわ・かおり)
- 生年月日 2000年7月29日(26歳)しし座
- 出身地 東京都(杉並区)
- 支部 埼玉
- 登録期 122期
- 級別 A2級(現在)/2026年後期(11月〜)はA1級へ昇格決定
- 身長 / 体重 152cm / 47kg
- 血液型 B型
- 師匠 桐生順平(登録番号4444)
2026年10月24日、住之江。
GⅢオールレディースの優勝戦。平川香織は1号艇からコンマ19のスタートを決め、1マークを先制しました。
下関に続く2場所連続の優勝。今年
3回目の優勝です。
ただ、この数字が並ぶまでには時間がかかりました。
初優勝は2026年5月。デビューから、8年が経っていました。
2025年11月〜2026年4月の優勝は0回、勝率は5.89。そこから半年で、勝率は7.22まで伸び、初のA1昇格を決めています。
何が変わったのか。そして、まだ変わっていないものは何か。
その途中経過を、ジキルが見ていきます。
8年越しの初優勝
2018年5月22日、戸田。17歳でデビューした平川香織が、初めて優勝戦で1着になったのは、2026年5月29日でした。
舞台は大村。ヴィーナスシリーズ第4戦スマホマクール杯。1コースからの決まり手は「抜き」でした。
1マークで勝負が決まる逃げ切りではなく、道中の攻防で勝ちをつかんだ優勝です。
並びは、1平川香織、2孫崎百世、3樋口由加里、4小芦るり華、5土屋南、6魚谷香織。ところが展示航走で2号艇の孫崎選手が転覆し、本番は5艇、進入は13/456になりました。
1マークは、4コースから差した小芦るり華選手が先頭。平川は2番手につけます。
勝負が動いたのは、2周目の2マークでした。平川は小芦選手の内を取って逆転。技ありの逆転優勝でした。
優出13回目での初優勝です。
ただ、この逆転は不良航法と取られました。優勝インタビューの表情は、ジキルには暗く映りました。そして、本人もインタビューでは、「きれいなレースではなかったので、素直に喜べる気持ちはあまりないですね…」初めての優勝なのに、手放しで喜べない。その悔しさが滲んでいたように感じます。
この初優勝を、いちばんに報告した相手が師匠でした。
平川香織の師匠は、2025年のSGグランプリを制した、桐生順平選手です。艇界を代表するトップレーサーで、平川は、その唯一の弟子にあたります。
祝福はしてくれたものの、返ってきたのは厳しい言葉だったそうです。その後の徳山PGⅠ(レディースチャンピオン)で、優出を目指す話をしたときも、師匠からは「優出は通過点で優勝しなきゃ意味がない」と返されたと報じられています。
徳山PGⅠを前に、優勝しても反省を口にするところに伸びしろを感じる、と平川選手に注目していました。
この師弟関係は、平川の側から願い出て始まっています。
本人がYouTubeで語ったところによると、最初にお願いしたとき、桐生選手からは「もう一回考えて、それでもつきたいと思ったら言ってきて」と返されたそうです。
平川は4カ月間考え、それでも付きたいと思って、あらためてお願いしました。尊敬している。桐生さんしかいない。断られたら、一人でやるつもりだった、といいます。
簡単には受け入れてもらえなかった。それでも自分で決めて、自分で選んだ師匠です。だからこそ、その言葉の重さを、平川が一番よく分かっているのだと思います。
そして、初優勝のあとの2勝は、もやもやのない優勝でした。
2026年10月6日、下関ヴィーナスシリーズ。予選を首位で通過し、準優、優勝戦と1号艇で逃げ切りました。優勝戦は枠なり3対3。スリットはほぼ横一線でしたが、まくらせず、差させず、逃げ圧勝。3連単は1,330円という堅い決着でした。
そして10月24日の住之江。2号艇の井上遥妃選手が強気に握って攻めてきましたが、うまく応戦して振り切りました。
本人は、スタートをしっかり行けた分、2号艇の気配を感じ取って反応できた、と1マークの攻防を振り返っています。
3つの優勝は、すべて1号艇、1コースからです。
派手な捲りで外から叩き切る優勝ではありません。内の枠を引いたときに、確実に仕留める。その形が、今期の平川香織の優勝には共通しています。

📸 写真提供クレジット:@kazu1220angryさん(掲載承諾済み)
平川香織の出身高校や学歴
平川香織選手は、東京都杉並区の出身です。
中学校は、フィギュアスケートの名門選手が多く進学する日本橋女学館中学校(現・開智日本橋学園中学校)。中高一貫校のため、そのまま日本橋女学館高等学校(現・開智日本橋学園高等学校)に進学しました。
同じ学年には、のちに世界の大会で活躍する樋口新葉選手がいます。
ただ、高校1年でフィギュアスケートを引退し、高校には休学届を提出して受理されました。ボートレーサーを目指すための決断です。
養成所には、フィギュアスケートでの実績が認められ、スポーツ推薦枠で合格。122期のスポーツ推薦で、唯一の合格者でした。
養成所での訓練を経て、2018年5月22日、戸田でデビューしています。最終学歴は、日本橋女学館高等学校休学中とされています。
フィギュアスケートが残したもの
平川香織は6歳からフィギュアスケートを始め、高校1年までの約10年間、競技を続けました。
小学生のころは、のちに世界的なスケーターになる羽生結弦さんと同じコーチに指導を受け、同じ場所で練習していた時期もあります。2014-15シーズンには、全国中学校スケート大会にも出場しました。
では、なぜボートレーサーだったのか。
きっかけは父親でした。ボートレースファンの父に連れられて、幼いころから戸田に通っていたそうです。
スケートで伸び悩んでいた2015年。当時の現役最年長だった加藤峻二さんのレースを父親と観戦し、それが決め手になりました。このレースは、加藤さんの引退レースだったといいます。公式では、中学2年でボートレーサーを決意したと紹介されています。
生まれも育ちも東京ですが、通い慣れた戸田への思いから、所属は東京ではなく埼玉支部を希望しました。
氷の上でバランスを取り続けた10年間。本人も、レースに対する考え方やメンタル面で、スケートの経験が生きていると話しています。
ジキルは、そのバランス感覚が、今の「崩れないレース運び」の下地になっていると見ています。
コース別データを読む(2025年11月〜2026年4月)
平川香織の(2026年5月〜)の勝率は7.22。
まず、その手前(2025年11月〜2026年4月)のコース別成績から見ていきます。
| コース | 進入率 | 1着率 | 3連対率 | 平均ST |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 17.1% | 45.8% | 79.2% | 0.20 |
| 2 | 16.4% | 17.4% | 65.2% | 0.19 |
| 3 | 17.1% | 12.5% | 75.0% | 0.17 |
| 4 | 19.3% | 3.7% | 59.3% | 0.21 |
| 5 | 16.4% | 0.0% | 47.8% | 0.19 |
| 6 | 13.6% | 5.3% | 31.6% | 0.20 |
※1着率は、1着数÷出走数(1コース11/24、2コース4/23、3コース3/24、4コース1/27、5コース0/23、6コース1/19)。
読み取れることは、3つあります。
1つ目は、進入率がほぼ均等なこと。1〜6コースがどれも1割台で、枠なり中心の選手だと見て良さそうです。
2つ目は、1コースが大黒柱だということ。この期はの1着20回のうち、11回が1コースでした。
3つ目は、勝つより、2着に残すタイプだったこと。前期は1着が20回(14.3%)、2着が34回(24.3%)。4コースは1着が1回に対して、2着が11回でした。
つまりこの期間は、着を拾う力は高いのに、勝ち切れない選手だったということになります。
氷上で磨いた小技×8年越しの初優勝=遅咲きのV3
2つの期を並べてみます。
| 項目 | 2025/11〜2026/4 | 2026/5〜 |
|---|---|---|
| 勝率 | 5.89 | 7.22 |
| 2連対率 | 38.50% | 54.3% |
| 3連対率 | 60.71% | 76.7% |
| 平均ST | 0.19 | 0.19 |
| 優出 | 1回 | 4回 |
| 優勝 | 0回 | 3回 |
※2025/11〜2026/4は公式データ、2026/5〜は独自の集計です。集計元が違うため、端数は参考値としてご覧ください。
注目してほしいのは、平均STです。0.19のまま、まったく変わっていません。
スタートが速くなったから勝てるようになったわけではない。ジキルは、ここが一番おもしろいところだと思っています。
では、何が変わったのか。マクールは、エンジンの出し方の精度が高いこと、そして何より、小技を利かせた巧みなレース運びが強みだと評しています。
2連対率が約16ポイント、3連対率も約16ポイント上がっています。着を拾う力はもともとあった。それが、勝ち切る力に変わった。そう見ると、数字の動きが説明できます。
ジキルは、平川香織を「自在に捌く『黒の平川』」と呼んでいます。
持ち味は、相手の動きを読んだ高度な技術です。ツケマイと見せかけて内を差す。差しと見せかけて全速で捲る。道中戦では、そうしたフェイントを混ぜながら、相手を迷わせます。
もともと道中戦に上手さがあった選手ですが、ジキルは、そのフェイントに磨きがかかったと評価しています。
初優勝の2周2マークで、先頭の小芦選手の内を取った一手も、この延長にあります。
数字の上では、2025年11月〜2026年4月は2着が34回、1着が20回でした。道中で着を拾う力はあった。その力が、2026年5月以降に変わり始めた、というのがジキルの見立てです。
そして、勝った3回はすべて1コースです。
内の枠を取ったときに確実に決める。この形が、優勝戦の1号艇という舞台と噛み合っている。今期の平川香織は、そういう選手です。
残りのピース
課題は、大きく2つあります。
1つ目は、外枠で勝ち切る形です。
2025年11月〜2026年4月は4コースで1着1回、5コースで0回、6コースで1回。外からの3連対率も、5コースが47.8%、6コースが31.6%と下がります。2026年5月以降のコース別データはまだ確認できていませんが、少なくとも優勝は1コースからの3回だけです。
外から勝つ平川香織を、ジキルはまだ見ていません。
2つ目は、スタートです。
徳山PGⅠでは、足がスリットで伸びていて乗りやすい一方、踏み込むと届き過ぎてしまい、5走とも全速では行けなかったと話していたそうです。足があるからこその悩みですが、平均ST0.19は、まだ伸びしろでもあります。
11月からはA1級です。1号艇に乗る機会は増えます。1コースで勝ち切る力は、すでに結果で見せました。ここから先は、その武器を持ったまま、外でどう戦うかの勝負になります。

📸 写真提供クレジット:@kazu1220angryさん(掲載承諾済み)
勝ちは3回、物語はこれから
父に連れられて戸田に通った少女が、デビューから8年かけて初優勝にたどり着きました。
そこからわずか5ヶ月で、優勝は3回。前期は0回だった女子レーサーが、A1級を手にしました。
氷の上で10年間バランスを取り続けた経験は、いまの崩れない運びに生きているはずです。
次に見たいのは、外枠から勝ち切る一戦です。
その日を、ジキルは楽しみに待っています。
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